HOME > 熱大学 > 熱電対について




 
 
 ・熱電対について

■原理

2種類の異なる金属導体の両端を接続し、閉回路を作り、一端を高温下に置き、両端に温度差を生じるとその金属固有の熱起電力が発生し、回路に電流が流れます。この現象をゼーベック効果と呼び、この原理を利用して温度を計測します。
この2種類の金属の組み合わせを熱電対と呼びます。
熱電対の起電力特性については以下、3つの法則があります。

1.均質回路の法則:金属線が均質であれば局部的に加熱をしても電流が流れないというもので、熱電対の両端が均質であれば途中の温度分布に熱起電力は影響されないことを示します。





2.中間金属の法則:回路中に異なった金属が入っても、その両端の温度が等しければこの影響は生じないというもので、熱電対温度センサーに異種金属である端子台やコネクタが使用できる理由となります。




3.中間温度の法則:回路中の中間温度が既知である場合、温接点、中間温度、基準接点それぞれの温度差から得た起電力の和と全体の起電力は等しい、というもので、熱電対の温度測定に必要な冷接点補償回路はこの原理に基づいて設計されています。




■種類

熱電対は構成金属の特徴と使用可能な温度範囲等から多くの組み合わせが規格化されており、日本工業規格(JIS)では3種類の貴金属熱電対(タイプB、R、S)と5種類の卑金属熱電対(タイプN、K、E、J、T)が定められています。

種類 構成材料 使用温度範囲 特徴
ニッケルおよびクロムを主とした合金
(クロメル)
ニッケルを主とした合金
(アルメル)
-200℃
〜1000℃
温度と熱起電力との関係が直線的であり、工業用として最も多く使用されている。
銅およびニッケルを主とした合金(コンスタンタン) 0℃
〜 600℃
E熱電対に次いで熱起電力特性が高く、工業用として中温域で使用されている。
銅およびニッケルを主とした合金
(コンスタンタン)
-200℃
〜 300℃
電気抵抗が小さく、熱起電力が安定しており、低温での精密測定に広く利用されている。
ニッケルおよびクロムを主とした合金
(クロメル)
銅およびニッケルを主とした合金
(コンスタンタン)
-200℃
〜 700℃
JISに定められた熱電対の中で最も高い熱起電力特性を有している。
ニッケル、クロムおよびシリコンを主とした合金
(ナイクロシル)
ニッケルおよびシリコンを主とした合金
(ナイシル)
-200℃
〜1200℃
低温から高温まで、広い範囲にわたって熱起電力が安定している。
ロジウム13%を含む白金ロジウム合金 白金 0℃
〜1400℃
高温での不活性ガスおよび、酸化雰囲気での精密測定に適している。精度が良くバラツキや劣化が少ないため、標準熱電対として利用されている。
ロジウム10%を含む白金ロジウム合金 白金 0℃
〜1400℃
ロジウム30%を含む白金ロジウム合金 ロジウム6%を含む白金ロジウム合金 0℃
〜1500℃
JISに規定された熱電対で最も使用温度が高い熱電対。


■特徴

熱電対は同じ接触式温度センサーである測温抵抗体に比べて次のような特徴があります。

  1. 安価で、構造が単純であるため高い信頼性がある。
  2. 広い温度範囲の測定が可能で、最も多く用いられるK熱電対では0℃から1200℃までを同一の熱電対で測定できる。
  3. 素線径を選択することにより、局所的な温度の測定、応答速度、信頼性の向上を図ることができる。
   4. 素線が雰囲気ガスに侵される可能性がある場合、熱電対種類によっては測定可能な雰囲気が限定される。
   5. 測定に際し基準温接点を必要とし、常温付近での温度測定には注意が必要となる。
   6. 温抵抗体と比較すると測定精度に劣る。


熱電対の素線は、酸化や腐食性雰囲気での耐久性を持たせるために、通常は外気から遮断します。外気から遮断するため、金属の被覆と一対の熱電対素線の間に、粉末状の無機絶縁物を充填封入して加工した熱電対のことを、シース型熱電対と呼びます。シース熱電対の測温接点には3通りあり、使用用途に応じて最適な接点形を選定することになります。

・接地型
熱電対の素線をシースの先端部に直接溶接して測温接点を作ったタイプです。応答性が早いのが特長で、素線がシースに接地していますのでノイズのある場所、危険な場所での使用はできません。

・非接地型
熱電対の素線をシース部と絶縁し、測温接点を作ったタイプです。応答性は接地型には劣りますが、長時間の使用に耐え、また、ノイズのある場所、危険な場所でも影響されずに使用可能です。

・露出型
熱電対の素線をシースから露出し、測温接点を作ったタイプです。応答性は3タイプの中では最も早く、わずかな温度変化も追従します。ただ、強度は著しく低いので基本的には使い捨てで使用します。

熱電対の寿命について

熱電対にも寿命があります。使用する温度や雰囲気に左右されますが、一般的に酸化雰囲気中で常用温度以下で使うと貴金属熱電対で約2,000時間、非金属熱電対は約10,000時間程度です。
上限温度で使用すると約50〜250時間と寿命は大幅に短くなります。
熱電対が寿命に近づくと正常な温度を示さなくなり、最終的には断線に至ります。
正確な計測を行うために、熱電対の定期的なメンテナンス・交換が必要になります。


 

 
 TOP 

Copyright©2013 Fintech-Tokyo all rights reserved.